アトポス便りバックナンバー


※炎症部位などの写真を撮影し送信して下さい

アトポス便りバックナンバー

今日の金沢は、初めての本格的な雪となっています。

風と湿った雪と稲光は冬の名物といってもあまり好きにはなれません。ですがその気候があって、植物や動物が粛々と成長していることも理解できます。この厳しさのなかで生きることは、敵に襲われる可能性が少なからず低いということなのでしょう。長い間、この環境で生きればいろいろな性格、いろいろな形態と他の地域との差が出るのも当たり前ですね。

今は、何処にでも直ぐに飛んでゆけますが、大昔は人足ですからね。言葉の違いも理解できるところです。

少年時代は、こんな事も思ったことなかったのに・・・・歳だなぁっとつくづく感じるこのごろです。

今年最後のアトポス便りです。

今回は皮膚の驚くべき働きをご紹介しますのでお楽しみください。中に判らない横文字や単語が出てきますが、、、、想像してということで・・・。

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1.皮膚はセンサーである
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カエルの卵が受精してから何回か細胞分裂をおこし、さまざまな臓器が形成され、やがてオタマジャクシになることはご存知でしょう。高校の生物の時間に、脊椎動物の発生の典型例としてこの一連のプロセスを学びます。そこで教えられるのが「外胚葉」「中胚葉」「内胚葉」という用語です。
中枢神経系ができるのは外胚葉からです。ヒトの場合には、発生から三~八週間で外胚葉、中胚葉、内胚葉に分かれます。胎生初期に体の全体を覆っている外胚葉の一部が体内にめりこんで管状の構造ができ、やがてそれが脊髄になり、一端が膨れ上がって脳になります。目や耳などの感覚器も外胚葉が体内に陥没して、それからそれぞれ複雑な構造がつくられていきます。

皮膚の中では、表皮が最初から身体の表面を覆っている状態が続いています。つまり表皮は外胚葉由来です。一方、真皮は中胚葉に由来します。表皮の基本構造ができるのは胎生2、3週ごろです。

そういうわけで表皮と中枢神経系は生物の体ができていく段階で途中まで同じ外胚葉に属していたのです。視覚、聴覚、嗅覚などの感覚器も同じ外胚葉から生まれました。これまでは、ただそれは発生の段階を示しているに過ぎなかったのですが、最近の研究では、その名残りが表皮に残っていることがわかってきました。

◆外部刺激のセンサーとしての皮膚

皮膚が外部環境のセンサーであることは言うまでもありません。ここではまず従来の考え方を紹介しておきましょう。

皮膚をなでたり押したりつねったりといった刺激を感じる装置としては、無毛部にあるメルケル盤、ルフィニ終末、マイスネル小体、パチニ小体があります。

メルケル盤は、表皮の基底部にあるメルケル細胞とそれに結合する末梢神経で構成され、局所的な圧力を感じる装置であると考えられています。ルフィニ終末は、真皮の下層にある小胞に包まれた神経終末で皮膚が引っ張られたりして変形したときに、それを感知する装置のようです。マイスネル小体は、真皮の上方にある神経終末が小胞に包まれた装置で触られた刺激を感知します。
ただし、持続的な圧力にはすぐ慣れてしまって反応しなくなります。パチニ小体は、無毛部・有毛部を問わず真皮下層や皮下組織に存在し、感度が良く、皮膚への接触を最初に感知する装置であるとされています。

また毛は、それ自体が敏感な触覚器官であることは経験的にご存知のことと思います。毛根には神経終末が巻きついていて、毛に何かが触れて傾くとすぐ反応します。イヌやネコの顔のひげはもっと敏感にできていて、毛の傾きをしっかり感知することはよく知られています。

次に刃物で切られてズキリと痛いのは、侵害受容器と呼ばれる神経線維の中でもとくに信号の伝播が速いAδ線維が損傷を受けた場合の感覚です。
神経線維は有髄線維と無髄線維に大別されます。前者は神経線維が絶縁体のさやで包まれていてソーセージのような格好です。刺激は電気信号として、その切れ目を飛んで伝わるので、伝播速度は秒速数十メートルに達します。Aδ線維はこの有髄線維です。後者の無髄線維は信号の伝播速度が遅く、秒速数メートルぐらいです。

以上の刺激は触ったり押したりつねったり切ったりという機械刺激に対する応答でしたが、皮膚が感じるのはそれだけではありません。温度を感じ、酸やトウガラシなど化学物質を塗られたときにも痛み、痒みを感じます。これらは総じて前述の無髄神経線維(C線維と呼ばれます)が感知していると考えられてきました。
末梢のC線維がそういう機能を持っていることは以前から知られていましたが、そのような多様な刺激を感知する神経上の分子装置が何であるかは20世紀末になって、ようやくわかってきました。

そしてその分子装置が明らかになったことから、さらに温度刺激や化学刺激に対する感受性の仕組みについて、予想もしなかった可能性が現れてきました。次の節では、そのいきさつについて述べましょう。

神経より先に表皮が感じる物理的な刺激(温度)や化学的な刺激(トウガラシの辛味成分カプサイシンや酸)に伴う痛みにイオンチャネル内蔵型受容体が関わっていることを明らかにしました。

このイオンチャネル受容体とは、細胞膜にあって刺激を受容すると特定のイオンを細胞内に透して、その結果電気的な信号を発生させる分子装置です。この受容体は摂氏43度以上の温度、ペーハー(PH、酸性度)六・六以下の酸性条件、そしてカプサイシンによって作動し、細胞内にカルシウムイオンやナトリウムイオンを流入させます。そこで細胞は興奮し、それに伴う細胞膜電位の変化が刺激となって中枢に至り、「痛い!」と感じる仕掛けです。
アメリカ人はタバスコをなめても熱いコーヒーをすすっても「HOT!」と叫びますが、これは分子神経生物学的に当然のことであって、すなわちどちらの刺激も同じ受容体で認識されていたのです。

酸、カプサイシン、熱に触れた際に感じる皮膚の痛みは、それらの刺激がこの神経末梢に因子が到達して引き起こされると当初は考えられていました

ところが外部からの刺激の最初の受容は神経細胞ではなく、ケラチノサイトである可能性が出てきます。最近になってTRPVlの類似受容体で、やはり温度感受性を有するTRPV3、V4の受容体も表皮ケラチノサイトに存在し機能していることが発見されました。TRPV3では摂氏32度から39度以上の温度でカチオンチャネルが開きます(カチオンとは陽イオンのことです)。TRPV4では二七度から35度以上の温度でカチオンチャネルが開くほか、浸透圧の変化や機械刺激によってもチャネルが開くことが知られています。
考えてみれば、これは生体にとってより都合のよいことです。神経末梢は表皮の裏までしか届いておらず、またパラパラとしか存在していません。一方、ケラチノサイト細胞は私たちの体の全体を覆っている最表面の臓器である表皮を形成しているのです。環境因子の受容装置が体の最表面にくまなく張り巡らされていて当然ではないでしょうか。

受容体TRPの仲間には、そのほかにも摂氏52度以上の高温を感知するTRPV2・逆に28度より低い温度でカチオンチャネルが開き、同時に皮膚に塗ったり舐めたりするとスーツとした涼感があるメントールも感知するTRPM8、さらに低い温度七度未満でカチオンチャネルが開くTRPA-が報告されています。TRPシリーズは体内温(37度)を中心に温度計の目盛のように、ずらりと揃っています。そして体内温に近い領域の熱を感知するものが、感覚神経のみならず表皮ケラチノサイトに存在しているのは大変興味深いといえ、おそらく皮膚表面の温度や酸性度(pH)、あるいは環境湿度や何かの接触を感知して、表皮、そして神経から全身情報を提供していると考えられます。

◆もう一つの痛みセンサー

痛みを感じる受容体は他にもあることが、ちょうど世紀を超える年に発見されました。それはATPがくっつくとカチオンチャネルが開くP2X3という受容体です
ATP(アデノシン三リン酸)は生体内ではエネルギーの通貨である、と高校の生物の授業では教わりました。しかしバーンストック博士らの研究の結果・神経系でATPは情報伝達物質としても役立っていることがすでに明らかにされていました。ATPの受容体、すなわちATPがくっつくと作動する分子装置には、大別してP2XグループとP2Yグループの二種類があります。
前者はTRP同様、イオンチャネルが内蔵されていてATPがくっつくと細胞内にイオンが流入します。P2YはGタンパク質という細胞内にあるタンパク質にくっついていて、ATPがP2YにくっつくとGタンパク質から細胞内へ二次的な信号が発信されます

P2×3はカチオンチャネル内蔵型受容体です。このP2×3のノックアウトマウスをつくってみたところ、ホルマリンなどを注射して引き起こす炎症性の痛みを感じにくくなっていることが見出されました。それから、これは余談になりますが、P2×3ノックアウトマウスはオシッコをする回数が少ないことも確認されました。P2×3は膀胱の表面に分布していて膀胱の中に尿が溜まると、その圧力を感じて脳に「尿意」をもよおさせるのだろうと考えられています。

さて気道や角膜のような組織表面にある細胞(上皮細胞)は、外部からの化学的、物理的刺激に伴い、ATPなどを放出します。これが細胞のATP受容体を介してATPを放出した細胞自身やその周りの細胞、たとえば神経末梢に作用し、細胞内のカルシウムイオン濃度を変化させるのだと報告されています。
私たちは表皮ケラチノサイト細胞も角層をセロテープで剥がしたりして空気に曝露すると、ATPを放出することを確認しました。これもまた刺激受容のシステムの一つでしょう。またATPが存在すると前述のTRPVlの温度感受性の閾値が摂氏35度にまで低下することを前出の富永真琴博士らが発見しました。日焼けして皮膚の炎症が起きているとき、ぬるい湯でも痛いのはこのためです

さらに驚くべきことに、このP2×3もやはり表皮ケラチノサイトにも存在することを私たちは見出したのです。
これらのことから、皮膚感覚の最初の受容機構をケラチノサイトが担っている可能性がさらに強くなってきました。これは触覚、痛覚、掻痒感などのみならず、外部からの刺激に対し、体内の免疫系、内分泌系を作動させる役割も含んでいると考えられます。

◆光を感じる皮膚

最後にもう一つ、皮膚は光を感じて、その情報を内分泌系、神経系に伝えている可能性があると考えています。視覚を失った人でも外部の光に応じて生理的変化が起きることは古くから知られています。
これは脳内に光感受性システムがあるためと考えられてきましたが、1998年、膝の裏側に光を照射することでサ重力ディアンリズム(概日リズム)を調整できることを報告しました。そのメカニズムとして血中成分のヘムタンパクなどに光感受性があるのではないか、と考察しています。
ヘムはある分子構造のことで、ヘムタンパクは血中ヘモグロゼンに関係する代表的な色素タンパクです。しかし表皮にも光感受性はあるのです。紫外線によってケラチノサイトがさまざまなサイトカインなどを分泌することはよく知られています。表皮が光を受容してメッセンジャー物質を分泌して、それが末梢血管や神経経由で内分泌系、神経系にもたらされ、気分や全身の状態に作用する可能性は十分あると想像しています。

季節性のうつ病というものがあります。北欧など冬が長く暗い地域での発病が多いと言われてきましたが、最近は日本でもその存在を指摘する声が出てきています。つまり光が不足すると、それが中枢神経系に作用するわけです。
光を感じているのは常識的には眼でしょうが、皮膚も関係しているとは言えないでしょうか。皮膚ガンの可能性があるのに、やたら裸になって日光浴したがる白色人種を、よく見かけます。あれは皮膚を光にさらすことで暗い冬の憂うつ感から逃れるためにしていることではないかと思われます。

※次回は「皮膚は脳である」をお送りいたします。これも凄い内容となります。

※Q&Aは、来年第2週となります。

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